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この町の中で一番高級なホテル。
国際ホテルとはいっても、都会から見れば小さな結婚式場に毛が生えた位のもの。
だけどこんな田舎では、どうして立派に見える。
そのホテルのシンボルである時計台を目指し、桃子は走った。
「ヤバい、もう約束の時間過ぎてる。」
ロビーに駆け込んだ時は、約束の時間から15分過ぎていた。
セーラー服で、息を切らしながらフロントに走り寄る桃子に、ホテルマンはいささか躊躇った。
まあ、ホテルではあまりに見られない客の姿であるからだろう。
「スミマセン、今日予約入れている井原の家族の者なのですが…。」
「あの、井原モーターズのご家族の方ですか?」
「はい、そうです。」
「お伺いしております。ようこそホテル花時計へ。ご案内致します。」
事情が分かったようで、ホテルマンはにこやかな営業スマイルを作って、桃子を先導して部屋へと案内する。
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