逃げだしたい

3/6
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
この町の中で一番高級なホテル。 国際ホテルとはいっても、都会から見れば小さな結婚式場に毛が生えた位のもの。 だけどこんな田舎では、どうして立派に見える。 そのホテルのシンボルである時計台を目指し、桃子は走った。 「ヤバい、もう約束の時間過ぎてる。」 ロビーに駆け込んだ時は、約束の時間から15分過ぎていた。 セーラー服で、息を切らしながらフロントに走り寄る桃子に、ホテルマンはいささか躊躇った。 まあ、ホテルではあまりに見られない客の姿であるからだろう。 「スミマセン、今日予約入れている井原の家族の者なのですが…。」 「あの、井原モーターズのご家族の方ですか?」 「はい、そうです。」 「お伺いしております。ようこそホテル花時計へ。ご案内致します。」 事情が分かったようで、ホテルマンはにこやかな営業スマイルを作って、桃子を先導して部屋へと案内する。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!