新しい生活

2/3
前へ
/9ページ
次へ
4人家族からいきなり倍の8人家族になる。 それを想像しただけでも大変な変化である。 亡くなった祖父母、母親がいた7人家族とはまた違う。 桃子とは、まったくの他人との同居なのだ。 古い家だが、昔からの大きな屋敷の一軒家。 8人家族になろうが、そこは問題なかった。 少し、近代的にリフォームを施し厚季達の受け入れの準備は滞りなく春休み中に終わった。 そして、入居予定日の前日を迎えた。 「桃子、今日も部活か?」 父親の言葉に、明るく答える桃子 「うん、たぶん何時もの時間に帰ると思う。」 「すまないな…俺のわがままで、いろいろ気苦労かけて…。」 「何言ってるのお父さん! いままで私達を育ててくれて感謝してる…。 仕事と育児の両立は、大変だったと思う。 今度はお父さんが幸せになる番だよ。」 「ありがとう…な、桃子。」 目頭を押さえてうつむく父親の悟。 「お前が、背中を押してくれなければ、この日を迎える事なんて出来なかった…。」 「泣かないでよ、お父さん! 涙もろくなる歳にはまだ早いよ。」 家族のために真面目に働いて育ててくれた父親の再婚を、一番に応援したのは桃子だった。 母親と小さいときに死に別れている桃子は、 ほとんど母親の記憶がない。 男手ひとつ、父親に育てられたと言っていい。 だから、父が大好きで、誰よりも大切な存在なのだ。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加