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【白い春ー03】
卒業発表会と言っても、年明け以降は主に受験対策に追われるのが常である。
よって「卒業発表会」は通年、クリスマスに行われることから、クリスマスイベントとして地域住民には浸透している。
そして大抵、演奏される曲は、三年次への進級試験で課題曲として選定されたものにつき、生徒としては一から覚える必要はないが、編成を楽譜通りとするわけにもいかず、アレンジを加えての演奏となるため、合同練習は11月から12月までの二ヶ月の間で五回、余裕をもって予定されている。
三年次進級試験の時に、あっさり第三楽章をすっとばして演奏したものの、それでも進級出来たという奇才と言うか天才と言うか、結局は才能がものを言う世界である以上、木下は誰もの予想通り、第一バイオリンの主席に任命された。
が、コンマスについては今回の発表会の指揮者であり責任者である遊佐先生の意向の元、異例ながら主席オーボエ奏者の遠山にお鉢が回ってきた。木下に任せるよりはマシ、くらいの差しか遊佐的にはなかったが。
奏は第二バイオリンの主席を与えられ、不承不承ながらも同じ第二バイオリンの副主席たる西村康治に宥められて毎日の練習を受け入れていた。第一バイオリンの副主席は山崎勉以外には務まらない、というのも暗黙の了解の元、そこら辺は安定のメンバーと言えた。
他に定石のメンバーとしては、主席フルートの聖にビオラの西村雛子、クラリネット奏者の高橋紗栄子にトランペッターの篠塚勲、ティンパニ奏者である志茂野丈児とファゴット奏者の佐々木渉、そして矢嶋蔦のホルンと言ったところだろうか。
はてさて、今年はどんなクリスマスイベント改め卒業発表会となるのやら、遊佐オリジナルに編曲された「チャイコフスキー作交響曲第4番」の楽譜を全員に配り終えたところで、第1回目の合同練習の幕が開いた。
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