9人が本棚に入れています
本棚に追加
自分たちは、いつも、こうしてきた。
広い、広いこの世界で、いつも二人きりで凍えるから、凍ってしまわないように身を寄せる。
ぴたりと一つにくっついて、互いの体温を分け合って、ようやく眠ることが出来た。
奥底に眠る蜜の味を早くに覚えてしまい、無差別に味わうけれど、美味しいのは一瞬で終わってしまう。
そしてどんなに飲み干しても、瞬く間に渇きが襲ってくる。
いや、飲めば飲むほど、渇いていく。
だけど。
勝己がそばにいるだけで、何もかも遠くに離れていった。
そして、どろどろに汚れた自分を、柔らかな白さですっぽりと覆い隠してくれる。
「憲、あのね・・・」
何事か伝えようと身動きするのを、腕の力を強めて制す。
「動くな」
多分、大切なことを、彼は言いかけた。
でも。
「ちょっと、だまってて」
可哀相な弟に、非道いことを言っている。
それでも。
今は、何も聞きたくない。
「うん・・・」
とく、とく、とく・・・。
小さな、小さな鼓動。
どこか天窓の向こうの雪のリズムに似ている。
さら、さら、さら・・・。
雪が降る。
命の上に、降り積もる。
白く塗り込められたこの世界のどこかで、
花は、また咲くのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!