元人間の少年吸血鬼

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 ロズウェルは勿論、アルセウスも。アルセウスはこの密会の立会人で、場所を提供しているだけに過ぎになかった。  マリーナの始めた闇商売と言おうか。アルセウス自身、この様な汚い商売に手を染めたくはなかった。彼は、この国の経済を任されている家系、真面目に働き、人と語り合う、これが幼きアルセウスの望んでいた商売であり、将来だった。  〝地上に滅多に上がれない吸血鬼の為、無償の血液を渡す〟  そんな都合の良い話が在るわけがない。この国は、王の発言総てに重みがあり、絶対なのだから。そして、地上の人間は皆一様に吸血鬼が嫌いだからだ。  そんな何処と知れぬ人からあれやこれやと理由を付けて血を貰い、それを吸血鬼に売る。これが、マリーナの見つけた、種族の別れたこの国での稼ぎ方だった。  無論、吸血鬼が血を吸わねばならないと言うのは人間の想像であり思い込みだ。  ロズウェルの言う通り、吸血鬼が必ずしも血を摂取しなければならないわけではない。吸血鬼も、普通に飲食をすれば生命維持に問題や支障等無い。血を摂取するのは吸血鬼特有の欲求とも言える。  ただ、血を摂取しないとその身体能力や治癒力に影響が出たり、感染症に掛かったりする為、定期的に血を摂取するだけで、それは、人間で言う薬やワクチンの様なものだろう。  血を吸う、これを除けば後は普通の人間と大差は無いのだ。 吸血鬼だからと言って夜を好むわけでもない、刺激物を好む者だって居よう。日中外を歩き回る吸血鬼も居る。然し、それらは【純血】ではないとも言われている。  それに、身体能力が高いとて、一端のスポーツ選手を少し圧倒する程度で大したことはない。 「奥さん、間違ってんだぜ。俺ァ等の中には血を必要としない者もいる。血が嫌いな者もいる。血に拒絶を示すものだって居る。こんなクソ不味い何処の誰とも知れん血は誰も欲しがんねェよ。要するになんと言いたいか言ってやろうか? こんなクソ不味いヤツは要らねェんだよ。お前は自分の息子に腐ったもん食わせられんのかァ? それと一緒だ」  今回が初めての客である、ロズウェルに向かってマリーナは強く睨み付け歯軋りをした。
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