混血ドワーフが迷い込んだ先

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 不可思議。不思議。摩訶不思議。私は、どうやら夢から醒めきっていないようだ。とびきりの悪夢を、カミサマは私にプレゼントしてくれたらしい。  ユメなら醒めて。なんて、効かなそうだ。もしかしたら、此処は深層心理世界の普遍的事象かも知れない。  でも、本当のコトなんて解りたくないだけなのだ。其れがエゴの世界の私たちの考えに変わりはない。  だって『オニィチャン』が教えてくれたことだもの。間違いの筈がない……。筈が無い……。  ふと、思う。私の呼ぶ『オニィチャン』とは、一体誰だかを、全く思い出せないのだ。  どんな関係なのかも、どんな姿形なのかも、頓と見当が付かないのだ。  記憶違いなのか、はたまた気のせいか。私には判らなかった。  依穏。いのん、何処にいるのだろう。此処は一体何処なのだろうか。  また、何処から知れず笑い声がする。 愚かしい。実に愚かしく御座います。まだ、御自分の立場がお分かりになってないのですねぇ。  さっきから、この声。人を小馬鹿にして見下した言い方。声音からして男か。  自分の立場? よくわからない。こんなオトギバナシチックなの以外は。  此処は異世界でも或るまいに。  次第に嗤い声は不気味に心なしか大きくなってきているみたいだった。  なんか、むかっ腹が立ってきて、私は声を荒げてしまった。  先程から私を嘲笑う此奴が、元凶だと思ったから。 「アンタさっきから何なのよ。依穏は何処なの? 依穏を返しなさいよ」  返ってきたのは予想通りか……否か。取り敢えず、声は返ってきたのは確かな筈だ。 はいぃ? よもや此処まで頭の弱いとは。呆れるに尽きませんよ。わたくしに文句(イケン)し、尚且つ噛みつく物言いをするとは……。  なんだ此奴は名も名乗らずに、呆れたこのおバカさんはと言わんばかりの態度口調は。  ゾクリ、冷や汗が背を流れる。分かっている、多分この声の主には適わないって事位、分かっているんだよ。  けど、何かを話して繋ぎ留めないとふわふわと核心がどこぞに行きそうで……。  気がするだけじゃ済まない。  何よりも此奴が、姿を見せずに。嘲笑うこいつは、愉快犯のようで。 おやおや、まだ悩んでいるのですか? 梨穏(りおん)殿。考えるだけ無駄ですよ? ご安心なさってください。わたくしには直ぐに会えますよ。
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