鴉色の暗殺者(メイド)

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 完璧に当たる少女は、欠けた何かを求める、成長しない少女。  常々に高飛車で高慢に振る舞い、幼く弱い心を隠すべく人々に憑け入るように、生きてきた。  少女はやがて指折りの暗殺者となった。  少女が殺めた数は、星の数ほどとも言われた。  然し、少女はそれにも疑心を抱き始めた。  そうして、少女は手に持つモノを、銃や暗器から、ポットやカップ、箒などに変えた。  それでも、非叫と絶叫と銃声と嗤い声の四重奏(カルテット)が、狂詩曲(ラプソディ)が、頭からから離れない。  絶叫と非叫と銃声が、聴きたい。想うが侭に奏でたい。  少女の狂った考えは既に常軌を逸していた。その時の少女の年齢は僅か九つ。  然し、幼い内に両親を無くし、身寄りもない少女に正しきを教える者は居なかった。  少女は幼いながらに、なかなかに鋭い考えと、狂った性癖とも言うべきもの持ち備えた。  手にしたポットやカップ箒などは、自然と体が行動してくれて楽だった。  少女が創りあげた完璧な少女に合っていたらしい。  そんな少女が、王宮でメイドとして雇われの身になったのは、十七の春だった。少女は目を輝かせて、王宮の業務をこなした。  完璧な少女は、体を動かし何かに頼られることを歓びと変えた。
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