9人が本棚に入れています
本棚に追加
1
「お前のことが好きだから付き合ってほしい」
窓の外から照り付ける陽射しのせいか、内から湧き上がる照れのせいなのか、克也の顔は火照っていた。
「お前が好きだ。ずっとそばにいてくれないか」
二人だけの音楽室では克也の声は虚しく壁に、絨毯に吸収されていく。
それでも克也は続けた。
「お前のことが好きなんだ。おれと付き合ってください」
克也の言葉を黙って聞いていた隆が思わず口を開いた。
「いや、なんぼほど練習すんねん!もうええやろノイローゼなるわ。何回も何回も」
告白の練習に付き合わされていた隆は辟易としていた。
「アホか! 初めての告白やぞ! これくらい練習せなどうすんねん!」
これでも物足りないという心持ちで親友の隆に言い返す。
「そもそも告白の練習ってなんやねん。思ったことそのまま伝えな、そんな演技みたいなもんで誰が喜ぶねん」
「練習せんと、噛んだらどうすんねん!
話のオチと告白だけは絶対噛んだらあかんねん!」
「じゃあ100歩譲って練習すんのはええわ。でもな……なんでずっと標準語やねん!?」
「お前はほんまアホやなぁ。亜美は東京から来てんねんぞ!万が一、大阪弁伝わらんかったらどうすんねん!」
「はぁ?」
最初のコメントを投稿しよう!