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「お前のことが好きだから付き合ってほしい」 窓の外から照り付ける陽射しのせいか、内から湧き上がる照れのせいなのか、克也の顔は火照っていた。 「お前が好きだ。ずっとそばにいてくれないか」 二人だけの音楽室では克也の声は虚しく壁に、絨毯に吸収されていく。 それでも克也は続けた。 「お前のことが好きなんだ。おれと付き合ってください」 克也の言葉を黙って聞いていた隆が思わず口を開いた。 「いや、なんぼほど練習すんねん!もうええやろノイローゼなるわ。何回も何回も」 告白の練習に付き合わされていた隆は辟易としていた。 「アホか! 初めての告白やぞ! これくらい練習せなどうすんねん!」 これでも物足りないという心持ちで親友の隆に言い返す。 「そもそも告白の練習ってなんやねん。思ったことそのまま伝えな、そんな演技みたいなもんで誰が喜ぶねん」 「練習せんと、噛んだらどうすんねん! 話のオチと告白だけは絶対噛んだらあかんねん!」 「じゃあ100歩譲って練習すんのはええわ。でもな……なんでずっと標準語やねん!?」 「お前はほんまアホやなぁ。亜美は東京から来てんねんぞ!万が一、大阪弁伝わらんかったらどうすんねん!」 「はぁ?」     
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