側に居たくても

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このことに思い至ったあたしは、悩まなかったと言えば嘘になる。 大好きな明美と離れるなんて考えたくもなかったし、だからと言ってあたしには人間の言葉は話せないから、この事実を伝えることもできない。 だから、明美や獣医さんがあたしと同じ真相に辿り着いてくれることを願い、耐え続けようと心を決めていたのだけれど、先週見てしまった明美の、あの泣く一歩手前のような悲しい表情を目の当たりにしてしまったときに、このままでは駄目なのだと考えを改めさせられた。 このままずっと耐えていれば、きっとあたしの身体は普通の猫よりも早く終わりがきてしまう。 正直、明美と共にいられるならと、あたしはそれも覚悟していたのだけれど、明美の方はそういう結末を望んではいないのだということがはっきりわかってしまった。 となればもう、あたしにできることは一つだけだった。 これ以上、明美に心配やお金の苦労をかける前に、この幸せをくれた場所から離れお互いの干渉を断ち切ってしまうこと。
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