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そうすれば、あたしのアレルギーはこれ以上酷くなることはなくなるし、明美も自責の念にかられ悲しむ必要がなくなる。
離れ離れにはなってしまうけれど、きっと死別というかたちになるよりはずっと救いのある結末になってくれるはずだ。
「――!」
ずっと遠くで、あたしを呼ぶ明美の声が微かに聞こえ、つい足を止め振り向いてしまった。
いなくなったことに気づき、心配をしてくれている。
声の響きでそれがわかったけれど、あたしはもう戻れない。
お互いが悲しまない未来を生きるためには、戻る選択肢は選べない。
明美。あたしは人と生きることに向かない猫だったけれど、すごく楽しくて幸せで温かい時間を共有させてくれてありがとう。
――さよなら、元気でね。
聞こえないとはわかりつつ、あたしはそう小さく鳴いて、再び狭い路地裏を駆け出した。
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