側に居たくても

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           ★ 「――恐らくは、ダニによるアレルギーが原因かと思いますので、ダニの駆除とそれから念のため食事の改善をしながら様子をみていきましょう。大丈夫、ちゃんと良くなりますよ」 三ヵ月前。あたしの診察をした獣医さんは曇りのない優しい笑顔で、明美にそう宣言した。 だけど、あたしの身体は酷くなる一方で、今ではもう顔の毛はほとんど抜け落ち、背中や尻尾周りの皮膚は見た人たち皆が顔をしかめてしまうほどにただれてしまっている。 身体中が痒くなり、我慢できずに掻いてしまうことも多々あるけれど、その度に新しく毛が抜けて皮膚は破れ血が滲む始末。 明美はもちろん、獣医さんにも原因を突き止められていない。 あたしの身体は、手の施しようがないままジワリジワリと劣悪な状態へ変わり果て続けていた。 「ユメ、ご飯だよ」 明美が買ってくれたクッションの上で丸くなっていたあたしの側に、そっとお昼ご飯が差し出された。 閉じていた目を静かに開いて顔を上げると、目の前には心配そうな目であたしを見つめる明美の姿があった。
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