側に居たくても

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今から約一年前。近くの公園に棲みついていたあたしを見つけ、保護してくれた大切な恩人。 一緒に暮らし始めてからの半年は、お互い幸せだったと思う。 明美は毎日あたしを大切にしてくれて、美味しいご飯をくれて、ブラッシングをして綺麗にもしてくれた。 お風呂に連れていかれるのはちょっと怖くてストレスを感じたりもしたけれど、それも最初の数回だけで、慣れれば気持ちの良いものだと理解できるようにもなれた。 いつもあたしを見る度に明美は嬉しそうに笑い、たくさん身体を撫でてたくさん話しかけてくれた。 野良で生きていた頃とは何もかもが逆転した、恵まれた生活。 あたしはこんな幸せをくれた明美のことが大好きで、これからずっと一緒にいられるんだとそう信じて疑わなかったのだけど――。 約半年前、あたしたちが一緒に生活を始めて一年の半分が過ぎた頃に、幸せの終わりを孕む不穏な変化が訪れてしまった。 ある日の昼下がり、突然あたしの身体にムズムズとした痒みが生じた。
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