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あおの一族
「蜃気楼がでてらあ。」
「呑気な声出さないでくださいよ、今日こそヤツを見つけないと。」
「やる気満々だな。どうせ何の手がかりもないってのに。」
呑気な声の横田と部下の森野宗治(31)。捜査一課の刑事で、ある殺人事件の担当だ。
2人が乗るパトカーは真っ直ぐ舗装された道路を走り、目の前で幻の様に揺らめく小都市に向かっていた。
ここは大都会に隣接する埋め立て地。20年前までは更地同然の場所には、商業施設、倉庫、そして少し離れの小高い場所に一軒の屋敷が建っていて、そこへ静かなパトカーは向かう。
幾何学模様のアーチが特徴的な門に設置されているインターフォンを押す間、横田はキョロキョロしている。
「相変わらずでけえ家だな。さすがは金も……おっと。」
『はい……ああ、また貴方たちですか。』
「警視庁の横田です。何度もすみませんね家政婦さん。こちらも仕事なんで。」
溜息と同時に切られたインターフォン。肩を竦めていると小奇麗に身なりを整え、エプロンを着けた女性、家政婦の三田が現れた。
「どうぞ。」
「どうも失礼します。」
「いつも言っておりますが荒らさないで下さいね。物を動かす時は私を呼んでください。」
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