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夕暮れに作り出される影模様が浮かぶ廊下
時おり楽しそうな声が聞こえる教室の前
廊下に溜め息を落としていく彼女は佇む
階段を誰もいないと思って登ってきた彼と目が合う
よ、よう
ん
彼は恥ずかしそうに目を逸らして鼻の頭を掻く
忘れ物?
いや、サボり
はぁ……まったくアンタは……
なははは
お前は帰らないのか?
……ちょっとね
彼女は教室の様子をチラリと伺う
はぁー……なるほどなるほど……
何よ?
いやー、青春だねー
うんうん、と彼はじじ臭く頷きながら彼女の横に並ぶ
うっさいわ、バカ
うぐっ
彼は肘鉄を鳩尾にもらって体を丸める
あのさ
何?
そんなにあいつが良いのか?
……
やっぱり俺じゃダメか?
幼なじみであってそういう風には見れない
変わんねぇな
彼は頭の後ろで手を組んでニシシ、と笑う
彼女はそんな彼の顔をチラリと見て、また溜め息を零す
いつの間にか、彼を見上げるようになったんだよなー
彼女は何となく思い出を振り返ろうとしてやめた
おわったー
お疲れ様
教室の中からそんなに声が聞こえて、彼女は扉に手をかけるそれじゃ、サボらないで部活頑張ってね
あぁ、お前も頑張れよ
彼女は扉を開き、夕暮れの中に消える
彼はその場を後にして影に紛れた
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