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夕闇に降りる階段
まるで今の自分の気分を現すようだなー
と少し詩人めいた事を思って恥ずかしくなって鼻の下を擦りながら彼は1段1段降りる
そんな暗闇から光が弾けるようなステップが音が聞こえる
手すり越しに彼が階下を覗くとその音を響かせてた彼女と目が合った
そして輝くばかりの笑顔で白い指先を突きつける
あー!やっと見つけましたよ、先輩!
げっ……!
あ、なんですかその嫌そうな顔!?
ぷんぷん、と頬を膨らませながら彼の元まで上ってくる
はぁ……今日も失敗か
ふふーん、私から逃げようなんて100年はやいですよ!
あぁー、分かったから近くででかい声出すな
彼女のよく通る高めの声に彼の鼓膜がよく震えた
彼女はそんな苦情なんてどこ吹く風で腕を組んでドヤ顔をしてチッチと指を振る
先輩、小さい私が声まで小さくてどうするんですか!
別にどうもしないだろ
彼は若干耳を手で覆いながら応える
踊り場はよく反響するな
はやく移動しないと頭痛くなるな
彼は足早にその場を後にしようとする
あ、待ってくださいよー!
だから静かに話してくれ
彼女は彼の横に並んで歩調を合わせる
そして自分よりも頭2つくらいたかい彼を見上げてニヤける
にへへ……
なんだよ、突然
なんでもないですよーっだ!
だから耳元で騒ぐなっての
そして彼が名残惜しそうに階段の上を眺めるのを見逃さなかった
その事に気づいて、彼女の笑みは夕闇に染まる
ねぇ、先輩
お、おう
突然のトーンダウンに驚く彼は、横にいる彼女の様子がさっきまでと違うのに気づく
こちらを見ずにただ前を見据えている
私、先輩のこと好きみたいです
そ、そうなのか
はい
ふーん
って、ちょっと待て待て
どうしたんですか?
彼は先に行こうとする彼女の肩に思わず手をかける
いや、どうしたんですかじゃなくて
彼は唐突な告白に狼狽える
なにがどうしてこうなったんだ???
しゃがみこんで頭を掻きむしる
実は私、先程告白されまして
ほう
突然彼女が語り始めたので、彼はとりあえず相槌を打って彼女の話を聞くことにした
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