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夕暮れの西陽が空をオレンジに染める
校舎裏にいる2人は体育館が作り出す影にくろく染められていた
彼女は手帳型のスマホケースのボタンを外したり付けたりしてそわそわと視線をさ迷わせる
彼女の前にいる彼はジッと彼女の足元を見つめる
あのさ……
彼女から間が耐えきれず指で髪の毛を弄びながら話しかけた
は、はひゅ……
彼はたった短い返事すら噛むほど緊張していた
一度開いた口はなかなか歯が噛み合わない
だけど、彼女はそのまま言葉を続ける
なんの用かな……?
放課後にLINEが突然送られて来て、やって来たものの5分近く何も無く、この後部活もあるので落ち着かなかった
いや、彼からどういう話があるか予想がついてるから落ち着かないのかもしれない
彼は何度か繰り返していた深呼吸をまた繰り返す
そして意を決したように彼女の目を正面から見つめた
いつも合いそうになると反らしていたのに
彼女も動じずに見つめ返した
自分と同じくらいの背の彼を
彼女の答えも決まっているから
彼からLINEが来た時に返事を考えて、行き着いてしまったから
気付かないふりをしていた自分の気持ちに
好きです、付き合ってください!
ごめんなさい
彼女は間髪入れずに断った
彼の時間は止まっていた
彼女はゆっくりと下げた頭を上げたが、彼は上げられなかった
気持ちは嬉しいよ、ありがとう
彼女は静かに、いつもとは違って穏やかに言葉を発した
でも、好きな人がいるから、ごめんなさい
そう言って、彼女はその場を後にした
火照った頬を軽く叩いて部活モードに切り替える
憧れてたシチュエーションだけど、こんな感じなんだ
そして、あの、先輩だったら……と妄想をして破顔した
その笑顔は影から抜けて光輝いていた
残された彼は頭を下げたまま、影に飲まれるようにその場に膝を着いた
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