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今度は答えをじっくり待つ。わずかに逡巡したものの、嫁……彼は、シャープペンシルを顎でカチカチやると、硬質な字でゆっくりと応えた。
『二年 機械科』
簡素だけども返ってきた答えに、思わずニンマリと頬が緩む。
『タメじゃん オレ工学科 名前は?』
『川住』
『下は?』
『春』
俺は思わず授業中ということも忘れて立ち上がるところだった。と自分では思った。実際はしっかりと立ち上がっていた。椅子を蹴り飛ばす勢いで立ち上がっていた。教室中の視線が突き刺さる。講師の先生も黒板によく分からない数式を書く手を止めて、ぽかんとした顔で俺を見ている。
「……君、何か」
「ッあああ俺は大丈夫です、お構いなくッッ」
早口でまくし立てて席に着く。また周藤の奇行かよ、とくすくす笑う声があちこちで聞こえてくる。くそおおおおお違う、違うんだ、だって、顔までそっくりなのに名前まで春って! 春って!
「あ、あの……俺何か変なこと言った?」
こそっと聞いてくる彼に、震える手でノートに返事をする。
『名前 ハルっていうの?』
リアル嫁改め川住春くんは、はっとしたように『春』の横に平仮名で『しゅん』とふりがなをふった。
あーシュンかー。シュンくんかー。まあいい。何、この奇跡。俺は彼と出会うためにこの大学に来たのかもしれない。それくらいの奇跡だ。
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