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 しかし、機械科とは。少し意外な気がした。 機械科とは、情報処理を主な分野とする俺の工学科と違って、より実技的な技能を学ぶ学科だ。つまり職人さん。声も態度も小さくて臆病な小動物のような彼と、その学科のイメージとはまるで結びつかない。  改めてその顔をまじまじと見る。特別女顔というわけではないのだが、男にしておくにはもったいない可愛さだ。そして俺の嫁こと春ちゃんに、本当によく似ている。ああ、眼鏡を外して髪を結んで忍装束着せたいなあ。同じ二年ということは別の教養科目でも一緒だったはずなのに、今まで気づかなかった俺の馬鹿バカ。  次に手元を観察。行間が異様に狭いノートには、几帳面な字でびっちりと授業内容が書き込まれていた。外見から予想できる通り真面目クンであるらしい。俺の嫁も優等生気真面目カタブツキャラだ。なんという一致。  さて。先生をちらりと見ると、時折手元の本に目を落としながら板書している最中だった。よし、今ならいける。俺は隣の彼にぐいっと顔を近づけると、その耳元に素早く囁く。 「授業終わったら連絡先教えてよ」 「え?」 「俺、きみと仲良くなりたいんだ。だめ?」     
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