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 だなんて聞いてみる。予定がないのは把握済みなんだけどね。案の定シュンは大して考えることもなく、ウンと小さくうなずく。 「何もないけど」 「一緒に買い物いかない?」 「……買い物?」 「そっ!」  そこでなぜか露骨に嫌な顔をするシュン。さては、俺と一緒に買い物イコールオタクなものを見にいくとでも思っているな? 俺はオタショップで一般人を連れ回すような、愚かなオタクではない。そのあたりの見境はあるつもりだ。 「服とか靴とかだよ。今、駅前でセールやってるし」 「あ、そ、そう……」  シュンは明らかにほっとした顔を見せる。うう、信用ないなあ。けれどこんなことでめげる俺ではありません。今日はシュンと一緒に買い物をして、そのままどこかに夕食を食べにいくのです。つまり。嫁との仮想デートですよ奥さん! 「でも、俺と一緒に行っても面白くないと思うけど……」  ショルダーバッグを両手でぎゅっと抱いてうつむくシュンの顔を、背を屈めて下から覗き込む。カッと赤くなる頬が可愛い。愛しい。俺はいつもの必殺スマイルで、顔をぐっと近づけた。 「なんで?」 「だって、君には他にもいっぱい友達いるし、俺と違って明るくて、かっこいい人ばっかり」 「俺はシュンと行きたいんだけど」     
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