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先にスタスタ行ってしまったシュンの足を止めるために、後ろから二の腕を掴んで引き寄せる。ややバランスを崩して後ろにのけぞったのを、自分の肩で受け止めた。
「あ、ごめん急に引っ張って」
「ううん、大丈夫」
慌てて体を起こすシュンの後ろ姿。その耳がほんのり赤くなっているのを見て、今の一瞬のシチュエーションを理解する。
シュン側からしたらこんな感じだろうか。
人ごみを縫って歩いていると、突然後ろから二の腕を掴まれた。
『時間かかるから一緒に会計しよ』
『あっ』
だが後ろに気を配っていなかった俺はバランスを崩し、後ろにのけぞってしまう。転ぶ、――そう思ったとき、何か温かく力強いものに体を抱き留められた。
『あ、ごめん急に引っ張って』
声がすぐ耳元でして、彼に体を預けている己の恰好に気づく。細身だとばかり思っていた彼の肩は存外に広く、力強い。そして俺の腕をつかむ手はとても熱くて、その温度と感触に俺は……――。
って違ううううううううううううう。なんでちょっとBL風味に考えちゃうんだ、俺! 違う! そういうんじゃない!
で、でも。シュンって俺の鼻に頭がくるほど小さかったんだな、とか。すごい軽かったな、とか。あ、赤くなってたな、とか。
あ、なんかだめだ俺。なんでドキドキしてるんだろう。
「じゃ、じゃあ周藤くんのもまとめて会計するねっ」
「う、うん」
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