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山田くん(仮)は俺の体をぐりんとミホちゃんのほうに向けさせると、しっかり着込んでいた赤チェックのジャケットの前を、盛大に広げた。それはもう、夜道に出現するコートの変態さんのように。
その瞬間の彼女の顔を、なんと表現すればいいのだろうか。目も口もぽかんと見開いて、……正直に言えば、カエルのような間の抜けた顔をしていた。
それもそのはず。ジャケットの下から現れたのは、お目目きゅるんきゅるん、カラフルな髪、ありえない巨乳にありえない細い手足の、超絶萌え系な女の子たち。俺の愛するヒロイン五人組のイラストが、Tシャツにばっちりとプリントされていたからな!
「え、え、えぇぇ? 嘘、あの、これって」
「そ! 周藤は超ッッ絶イケメンだけど、超ッッ絶オタクだからな!」
「いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁ!」
夢を残酷なまでに砕かれた悲劇の女の子の声が、ホール中に木霊する。
ああ、慣れているとはいえ、むなしい……。
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