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教室中が注目する中、眼鏡くんの顔が可哀相なくらい蒼褪めていく。音の正体は、彼のショルダーバッグによって床に落とされた俺のペンケースだった。ああ、これだからスチール製は。でも仕方ない。だって、そのペンケースは俺の嫁こと、アニメ『戦国おとめ☆てんちゅーファイブ!』のヒロインの一人、小早川春ちゃんデザインのペンケースなのだから。
俺はぬかりのないオタクなので、嫁デザインのものはすべからく保管用と実用用をそれぞれ保持している。よって床に落ちたくらいで取り乱したりはしない。だが眼鏡くんは顔を真っ蒼にして両手をわたわたと動かし、分かりやすく慌てふためいた。
「ごっご、ごめん、俺、よく見えてなくてっ」
「あーいいっていいって」
ともかく散らばった筆記用具を拾おうと机の下に身をかがめたとき、同じように身を低くした眼鏡くんとお互いの頭頂部がごっつんことぶつかった。
「いてっ」
「あ、ごめん」
カシャン、と軽い落下音とともに眼鏡くんの銀縁眼鏡が床に落下する。すぐに拾い上げて手渡そうと顔を上げて、硬直した。
地味モッサリ眼鏡くんは――俺の嫁、春ちゃんにソックリな顔をしていたのである。
そして、冒頭に戻る。
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