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【荻原直紀】
一年ほど前……。
「…………出ないなぁ」
長いようで短い夏休み真っ只中のある日。
眩しい日差しがまだ頂点へと至っていない時刻に、俺は心臓の鼓動を著しく加速させ携帯電話を耳にあてていた。
「…………もしもし?」
しばらく続いた呼び出し音で出れないのかと思われたが、しばらくすると聞き慣れた声でそんな言葉が耳に届いて来た。
「あ、でた。あの……さ……今日……」
相手は俺の彼女だ。
電話をかけたのはいいものの、心臓が張り裂けそうになるほどに働き、緊張してしまってうまく本題を切り出せない。
「今日?あ、今夜花火大会だったね!行こう行こう~」
「そっそ……う……花火大会に誘おうと思って……」
彼女で電話をかけた理由は今夜の花火大会に誘いたかったからである。
自分から誘おうと思ったが緊張のあまりに怖がってしまい、彼女からになってしまう結果にはなってしまったが成功と言えば成功。
「何処集合にする?早めにいかないと場所取れないかもね」
「じゃあ……」
毎年この花火大会は人気が高い。全国各地だけでなく外国人も多いのだ。俺たちは混雑を考慮して少し早めの時間設定で集合場所を決定した。
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