夢だった

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呼び覚まされた朝は、とても清々しいものでした。 いったい、なんの夢を見ていたのか。 また、見たいような・・・見たくはないような複雑な気分を覚えました。 何もなかったはずなのに、私は泣いていました。 『好きだよ』 ツンと鼻を刺激するようなバニラの香りが一瞬。 それと同時に、ふんわりシトラスの香りが私の鼻をかすめます。 「変ね、」 私は、どちらの香りも知りません。 しかし。確かに存在したのだと言うことを私の感覚は告げています。 現に、涙が溢れて止まらない。 確信したのです。 夢の中で、私は、何かあったのだ―――と。 それは、とても大事な人を失う感覚と似ていました。 手がかりは、シトラスの香り。ツンと鼻を刺激するバニラの香り。 香りと共に脳裏をかすめた、『好きだよ』の声。 それしか、ないのです。
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