【死運黒手】

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普段は温厚でとても優しい人なだけに、この人が獲物を甚振(いたぶ)る姿を見ると毎度恐怖を感じていた。 「俺が第3小隊の隊長に任命されて初めての部下はお前やったね」 「何度も意見の食い違いで揉めて喧嘩して。」 「新人が入隊してきて緊張しとった俺をサポートもしてくれた。」 「地上から帰って来たら、お互い無事生還出来て良かったって、毎度酒ば飲みに行って。」 「準1級やった俺が1級の昇格試験に合格した時には仲間と祝ってくれた。あれは嬉しかった。」 「なぁ...何とか言ったらどない!」 俺との思い出を話しながら、思い出の数だけ銃弾を撃ち込んでいく。 感情の篭っていない淡々とした声。しかしよく見るとナツ隊長は目元に涙を滲ませていた。 何十発と銃弾を撃ち込まれ手足の感覚は無い。 痛みも感じなくなって来た。 そんな俺を見てそろそろ堪えきれなくなったのだろう 「もう...そろそろ終わりにしようか」 と俺に語りかけた時だ。 ずっと彼方に見えていた1隻の小型輸送艦が頭上に到着した。そこから降りてきたのは。 「...なして匙がこんなとこ来たと?」 「遠目に人影が見えた時まさかと思ったが...やっぱりお前か、ナツ」 匙第1小隊長だ。実地試験で狩猟者1級に1発合格した数少ない超人だ。こんな形で国の英雄様に会えるとは。     
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