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「ねえ、匙くん?」
「ねぇー、匙くん」
「ねぇ!匙くんってば!」
さっきから横でやかましい。
デバイスから目を上げて横の女の子に向き直る。
「何なんだよ、淡雪」
淡雪と呼ばれた少女は身長140くらいの小柄な体に
淡い水色の髪を腰まで伸ばし、ルビーの様な赤い瞳でこちらの顔を覗いている。
「やっとこっち向いたぁー。何回も呼んだんだよ?」
「で。何だよ、何回も呼ぶからこっち向いてやったぞ、要件は?」
「もう、匙くん私に対して冷たすぎない?」
「別に冷たくねぇよ、今講・義・中。」
「どうせ聞いて無いくせに...。」
「うるせい。んで、何なんだよ、何か用か?」
あぁ、そうだった、と彼女は1つ咳払いし、長い髪を耳にかけ直して。
「匙くん、一緒にプール、行かない?」
そうか、そういやもうそんな時期なんだな。プールが解放されてるのは7月だけだもんな。
「...やだ。」
彼女の問に対して素っ気ない返事で返す。
「俺が水嫌いなの、知ってるだろ。それに俺は大衆に肌を晒せない」
「だから夜行くの!行く相手がいないんだもん、ついてきてくれるだけでいいから!...駄目?」
「可愛く首傾げたって駄目だ。俺は行かない」
...ケチ。そう小さく呟いた彼女はそっぽを向いて不貞腐(ふてくさ)れる。こういう動作がいちいち可愛い。
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