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猫又とは何か。我が家の猫又――ひいばあさん命名クロコさんご本人によればめっちゃ長生きした尻尾が増える化け猫、とのこと。大体猫生20年くらいで怪しいらしい。まあ個体差や資質もあるらしく必ずしも猫から猫又になるわけでもないらしいけど。逆に産まれた時から猫又の猫もたまにいるっぽい。
そんなクロコさんひいばあさんに捕獲――拾われ飼い猫ならぬ飼い猫又になったわけだが。普段は我が家にいない。ふらっと何処其処いってしまう。最近見かけないなと思ったら朝布団の上で丸くなって寝てたりもする。自由である。流石猫。
さてそんなクロコさんやはりというかなんというかここ最近というか近年ぱったりと姿を消していた。ちょっとばかり心配したりもしたがクロコさんなりの事情の為である。
猫又は長寿である。元々が長い歳月を経た猫が変化した存在であるから納得なのだが、問題でもあるのだ。普通の猫はそんなに生きない。10年くらいなら「まあ長生きな猫ちゃんなのね~」で済むが人の赤ちゃんが高校生になった辺りで「あれ?」となり、大学生になったところで「生きすぎじゃない?」となり、成人し大人になり働きだしたとこら辺で「………」無言の疑いの眼差しを向けられる。
当然の結果である。
だからクロコさんは旅に出る。そんな正論を振りかざし。だけど俺は知っている。それはただの建前だと。別な理由と目的があるのだと。
と、まあそんなことは流しにでも流してしまうとして。クロコさんは旅に出ていた。つい先日まで。それがコンビニでお金を下ろし真向かいのスーパームラヒラで食材を買い込み帰宅したら畑にいた。
カラカラになりかけの人形のナニカをカジカジしてた。びっくりである。久しぶりに帰ってきたと思ったら雀や鼠それを狙った蛇といった小動物でなく、人っぽいナニカをお土産にしているのだもの。恐ろしいものを見た。戦慄に支配されかけた。
なおそのナニカは右手に我が畑産の胡瓜、左手にも同じく胡瓜を握りしめていた。現行犯であった。事案である。
そしてその胡瓜は今現在、盗人兼被害者の手により美味しく調理され食卓に並べられている。
犯人もとい河童のお嬢さんの自供によると。
「出来心だったんです。水が切れてひもじくて。渡されたお金は使えないし。胡瓜買えないし。もう駄目だと思ったら目の前に胡瓜が。みずみずしい胡瓜が。獲るでしょ。盗っちゃうよ!」
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