1 2005年、夏

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ユカさんは私の元バイト先の先輩である。 歳は二十歳で、高校を卒業してからずっとフリーターをやっている。 背が高く、古着系ファッションを好んでおり、非常に面倒見の良い人だった。 高校一年生の時に地元のスーパーでバイトし始めて知り合い、何故か私をとても可愛がってくれた。 シフトが被った時には車で家まで送ってくれたり、休みの日に買い物やカラオケ、映画に連れ出してくれた。 成績が芳しく無いという理由で高校側からバイトを辞めるよう言われた時、抗議してやると高校まで行こうとしたのを必死で止めたのが懐かしい。 結局バイトは辞めたのだが、それでもユカさんは私と連絡を取り、働いていた頃と全く変わりなく可愛がってくれた。 こうして私が東京に脱出……もとい遊びに来れたのも、ユカさんが誘ってくれたおかげであった。 夜行バスから降りて早朝5時半の東京駅に放り出された私たちは、駅のトイレで化粧をしてからひとまず目的地である三鷹駅を目指し電車に揺られていた。 地元とは違う、朝から賑やかな駅に圧倒されて私は浮足立っていた。 大きなキャリーバッグやバッグの重さを感じないほどに。 隣に立つユカさんが持っていた携帯を閉じた。
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