1 2005年、夏

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「従兄妹、起きてるからすぐ迎えこれるって」 「ありがとうございます。私までお世話になっちゃって、すみません」 「気にしない気にしない、アタシが誘ったんだもん」 おじちゃんたちも気にしないし、歓迎してたよ?とユカさんは明るく笑った。 私は手元にある、地元の銘菓のお土産の入った紙袋をちらりと確認した。 ちゃんと挨拶できるだろうか、ユカさんの後輩でいつもお世話になっています、三日間お世話になりますといって、ツマラナイモノデスガとこれを差し出すことが出来るだろうか。 私の緊張を悟ったのか、ユカさんは話題を変えた。 「ねぇ、ママからメールきた?」 その話題はやや、いや、かなり厄介な話題だった。 私は首を横に振った。 「来てませんよ、てか多分ずっと来ないです」 ユカさんは苦笑した。 「離れてたら少し落ち着くかもじゃん?」 「私はこのままでもいいです。東京に住んじゃいたいくらい」 電車の窓にうつる私は、校則で禁止されている茶色い髪をしている。 この日のために買った、白のサテン地に黒レースのついたキャミソールと黒いタイトなミニスカート、ビジューのついたシルバーのサンダル。 しょぼくれた田舎で、母親のもとで暮らしている私とはもう違うのだ。 「住みたいのは超思う、従兄妹が羨ましいよ」 行き交う人々……東京に住んでいる人々を見て、親の在り方一つで、こうも人生は変わるのだろうと私は思った。
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