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いいって言ってよ
パパが死んだ。
ずっとボクのことを怒ってばかりだった、パパが死んだ。
正直、あまり悲しくなかった。
ほっとした気持ちの方が大きかった。
ボクが居間でテレビを見ていると、必ずパパはボクを怒鳴りつけてきた。
「役立たず」とか「この家に居なくていい」とか、ひどい言葉で。
ボクは怖くて悲しかった。
あんまりじゃないか、自分の子供なのに。
ボクはパパと顔を合わせたくなかった。
なるべく、二階の自分の部屋に閉じ込もって過ごした。
ご飯も、ママに運んでもらって、部屋で独りで食べた。
パパは、そんなママにまで怒っていた。
一度、パパがボクを本当にこの家から追い出す、というような話をしているのが聞こえてきたことがある。
でも、ママがそれに反対する言葉も聞こえてきた。
ボクはうれしかった。ママはボクの味方なんだ。
ママは、きっとこれからもボクを守ってくれる。そう思った。
でも……パパが死んでから、ママはずっと悲しそうだ。
お葬式が終わってからも、ママは毎日暗い顔をしている。
時々、泣いていることもある。
ボクはなんとかママを元気づけたくて、いつも明るく話しかけるようにした。
「ママ、お帰り! ポテチ買ってきてくれた?」
「ねぇママ、明日の晩ご飯は特製ハンバーグにしてよ!」
「ごめんなさい! ママの分のプリンもボクが食べちゃった!」
それなのに……ある日、突然、ママとの別れがやってきた。
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