親の愛情、無条件には与えらず

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「もうラジオ体操始まっちゃってるかな」  大きな欠伸をしながらまだ夢現の頭にエンジンをかける。バイト先の店長に人手不足だと半泣き状態で訴えられ、押し負けた私は深夜遅くまでバイトに入りそのまま休憩室で寝てしまった。  気掛かりは一人で夜を明かしたであろうおばあちゃんのことだ。ご飯は食べただろうか、長風呂して倒れていないだろうか、就寝前の降圧剤は内服しただろうか。二人暮らしをしているおばあちゃんへの心配事は尽きない。  季節は冬。あと一週間もすれば冬至を迎える。空気よりも暖かい息はハァーっと吐けば白い綿菓子のような姿で宙を踊り、それは空気に溶けて姿を消す。それを見つめながら、コンクリートの地面を規則的に蹴る足は市民が集う公園へ向かっていた。 「おばあちゃん、無事に着いたかな?」  毎朝六時から公園で行われるラジオ体操に参加するのがおばあちゃんとの日課だ。本来ならば毎朝一緒に公園へ向かうのだけれど、バイトの一件もあり私は家へは帰らず直接公園へ向かっている。
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