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公園の角に差し掛かるとラジオ体操のお決まりのメロディーが耳に届いた。聞けば自然と身体が動いてしまう不思議なメロディーは、もはや私の身体の一部になりつつある。
少し足早に足を動かし公園の入口に右足が着地した瞬間だった。
「お前、早く家に帰れ!」
私の両肩を痛いくらいにガッシリと掴み、狐につままれたような顔をしているのは同い年の中条 優馬。無造作に整えられた黒髪がよく似合う爽やか男子。私と同じで毎朝仕方なく時間を共有しているラジオ体操仲間であり大学の同期でもある。
この寒空の下、優馬の額からは汗脂腺が開ききっているかのようにきらりと光る汗が溢れてきている。
「私はお前じゃなくて雨宮 絵麻って名前が……」
「んなこと、どうでも良い!」
「どうしちゃったの?てか、汗拭いたら?」
「絵麻のばあちゃん、死んだかもしれないんだよ!」
その言葉を聞いてもしっくりこず間抜けな顔をする私と、取り乱し過ぎて言葉選びすら出来ていない優馬とのテンションの差が明らかにおかしい。優馬が頭を抱えて地団駄を踏んでいる姿からすると隔靴掻痒と言ったところだろうか。
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