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愛なんて要らない。
愛なんて不幸しか与えない。
私は要らない子なんだ。
そう思っていた私に手を差し伸べてくれたのが父方のおばあちゃんだった。
「絵麻ちゃんはおばあちゃんの大切な子だよ」
久しぶりに誰かに抱きしめられたあの温もりと安堵感は忘れもしない。おばあちゃんの鼓動音が耳に届き、私はもう一人じゃないんだって思った。
「お母さんとお父さんは私が嫌いだからお仕事ばかりするのかな?」
「家族以上に大事なものがあると思うかい?」
「でも……私は要らない子だから」
「絵麻ちゃんが毎日幸せだと思えるようになるまで、おばあちゃんは死なないから安心しておくれ」
「死んじゃヤダ。ずっと一緒にいてほしい」
「うんうん。ずっと一緒じゃ」
私をおばあちゃんに預けた両親は荷物をまとめ赴任先のカナダに引っ越しった。肩の荷が下りたような両親の安堵の表情は今でも脳裏に焼き付いている。
邪魔者がいなくなったという安堵の表情が──。
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