青魂

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 草原を抜けると、今度は白い砂で覆われた広場に辿りついた。艶やかな石で出来た、様々な形や色の立方体が、宙に浮かんでいたり、砂に埋まっていたりする。その中心に、小さな子どもを見つけた。彼は、大きなモミの木の下で白いマグカップを構えている。大きい、と言っても玩具屋で売っている一番大きなクリスマスツリーくらいの大きさだ。そこで、葉からランダムに落ちてくる滴を集めている。時々、鼻の頭にあたり、不快な顔をした。  軽やかとは言えないステップを踏んで(当の本人はステップを踏んでいるつもりはないのだが)滴を集める姿がとても面白い。ずっと見ていると、小さな子どもは一段と不快な顔をして、文句を言ってきた。 「お前はソレを煮詰めてろ!」  手が離せない小さな子どもは、顎を使ってソレを指す。猫足の三脚台の下に、アルコールランプが据えられ、その上では使い込まれたアルミの鍋が火にかけられていた。僕には必要ないが、足場の広い脚立も近くに設置されていた。  中を覗くと、コールタールのような液体がぱちぱち泡をはじかせて煮詰められている。 「もう煮詰まってるよ。これ以上は焦げそうだ」  小さな子どもに抗議する。丁度、いっぱいになったマグカップを新しいものに持ち替えているところだった。あきれ顔でこちらを見ている。 「お前、それがキレイだと思うか?」 「思わない」 「だったら、キレイになるまで煮詰めろ!」  小さな子どもは再びステップを踏み始めた。僕は仕方なく、近くに落ちていた木製の匙で鍋の中身を混ぜた。見た目よりもサラサラしていたので、あまり力を入れなくても全体を混ぜる事が出来た。 「お前、歳は?」 「28、だけど」  小さな子どもはせっかく集めた滴のほとんどをこぼした。それだけ、腹を抱えて笑った。 「18の間違いだろ!」  確かに、幼い顔立ちをしている、と、いつも言われていた。だからって、こんなに小さな子どもにまで言われると、何だか情けなくなった。それにしても、「誰に」、「いつも」言われていたのだろうか。
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