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鍋の中全部が、すっかりきれいな青に変わった時、小さな子どもはアルコールランプの火を消した。鍋を数回ゆすったり、ポケットから小瓶を取り出して万遍なく振り掛けた。僕は痛みが治まらず、痛がる気力も奪われ、その様子をただ眺めていた。小さな子どもが突然消え、僕は眉だけを動かす。同時に、身体をふわりと包まれた。
心地がよく、目を閉じる。薄く目を開けると、白い髪が随分近くに見えた。さっきまで小さな子どもだった青年が、よれよれになった僕の身体を支えてくれていた。
「頑張ったな。どうしても、これだけの事をするには対価が必要なんだ」
頭の中に、誰かの視点で水中が映し出される。淀んだ水の中で、ぼこぼこと泡を吐き、沈んでいく。急がなくては、と思った。
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