舞い散る桜・2

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舞い散る桜・2

 橘小学校。律たちの卒業と同時に廃校になり、いまはだれもいない。のちの用途は未定で、どこかの業者が管理を委託されているらしいが、ほぼ放置状態だ。時おり地域の住民がボランティアで草払いをしてくれているが、それでも敷地のあちこちに雑草ははびこり、伸びていく。  律たちは、卒業以来、こっそりここに忍び込んで遊んでいる。まわりの大人たちが気づかないはずはないが、あえて黙認してくれているのだろう。あくまで、「グラウンドに忍び込む」ことに関しては、だけど。  ふたりは正門までのルートを行かずに、段々に連なった畑の間を走る、長い石段をのぼった。石段はグラウンドに通じている。ぐるりにある畑のいくつかはかつて学校菜園として使われていたが、いまは世話するひともなく荒れている。藪と化した畑から少しばかり奥の林に寄ったところに小さな家屋があり、そこは校長用の住宅だった。もちろんもう誰も住むものはいないし、これから住むものもいないだろう。     
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