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「あら、もしかしてその服、モードルネージュの春限定モデルじゃないですか?」
職員室に入ると、若い女の先生同士の会話が聞こえて来た。
声につられ、目を向ける。
「そうなんです! よくご存じですね! 一目惚れして、思い切って買っちゃったんです!」
「素敵ですねー! とっても似合ってます!」
「ありがとうございます! 茜先生もご購入されたらいかがですか?」
「んー、今月ピンチだからなぁ……。でも、迷っちゃいます!」
意外と息が合ってるんだよなこの二人……。関わり合いになりたくないので、僕は自分の席に移動して一限の準備を始める。
冒頭の話に戻ろう。
簡単に言えば、僕は人の言葉にルビが見える。
ただし、ただのルビではない。
口では「素敵」だと言いながら、心の中では「ださい」と思っていれば、「素敵」というように。その人が言葉に込めた本当の意味を感じ取ることが出来るのだ。
漢字限定の読心術、とでも言ったところだろうか。
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