ブルー・キラー

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 初対面の生徒の性格や考え方を知り、今後どう接するのが良いのか、クラス全体のバランスは勿論のこと、個々人にどう向かうかの方針を定める。  それが、僕の能力の使い方だった。思春期真っただ中にある少年少女の扱いは難しい。けれど、生徒の心の中が覗けるのならば、これほど強力な武器はない。  お陰で生徒や保護者、先生方からの評判は上々だ。 「あはは、轟、かっこいいよな。先生も好きだよ。画数の多い感じはロマンだと思う。因みに轟は二十一画だけど、日本で最も画数の多い漢字はなんと八十四画で――」  勿論、これは授業でもあるので、漢字に関わるプチ知識を教えることも忘れない。まぁ僕が語りたいっていうのもあるんだけど。  その後、順々に生徒は自分の好きな漢字や熟語を発表していった。 「私は、(将来お花屋さんになりたいけど……)、です……。理由は……お花(そんな子供っぽい事、言わない方がいいよね)が好きだから、です……」  花屋になりたいが、それを言ったら馬鹿にされるかもしれないと思っているのか。少し自分に自信がなさそうに見える。  花屋は立派な職業だ。他校との野外オリエンテーリングや職業体験なんかを通して、そういう意識を芽生えさせてあげたいところだ。 「僕は、合縁奇縁(宿題忘れてて、さっき辞書で調べたけどバレないだろ)です。理由は、あー……全ての出会いに意味があったら、それって素敵だなって思うからです」  さっきからこそこそ電子辞書で何してるのかと思ったら、今調べてたのか。  大方、四字熟語辞典の序盤から取ってきたのだろう。  宿題を忘れたり、それを授業中にやってしまう態度は改めさせたいが……それっぽい理由をその場で考える頭の良さ、要領の良さは評価したい。  うまく転がして、どんどんやる気を引き出したいところだ。  十数分後、最後の一人の番になった。
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