「き、霧咲……?」
「ふーん……」
流れるような動作で、彼女の両手が、僕の頬に添えられた。
ほっそりとした指が、そっと僕の両頬の上を這う。
「ねぇ、先生」
瞬間。
ぐっと彼女の両手に力が入り、霧咲の顔が近づいた。
咄嗟のことで、僕は彼女を振り払うことも、抵抗することもできなかった。
前かがみになった状態で、霧咲の綺麗な顔を目の前にして、僕は硬直する。
そして霧咲はゆっくりと口を開いて――言った。
「青」
「がっ――!」
「青青青」
「や、め」
「青青青青青青青」
どさりと、僕は膝をついた。
先ほどとは打って変わって別人のような……いや、恐らく彼女本来の、妖艶で淫蕩な笑顔を浮かべ、呟く。
「やっぱり見えてるんですね」
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