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プロローグ:ダブルスタンダード
ついてない―――
人よりもそう思うことが多くなったと、感じ始めたのはいつ頃だっただろうか。
たとえば、自転車を漕ぎながら走っていると信号機の度に赤で止められてしまうとか。
目覚ましの電池が切れていて寝坊して、電池を買いに行ったら売り切れ、とかそういうレベルの不運も重なればしんどくなってくる。しかも僕はそれが他人よりはるかに多い。
小学生の頃くらいから足音をさせないように意識して歩いてみたり、級友と会話している時も一歩後ろから眺めているようにも考えたりもしていた。
これは予防線みたいなものだろう。思ったままに話してしまうと相手を不愉快にしてしまい、自分の失言が結果として仲間外れなどのしっぺ返しで帰ってきたりもする。それはごめんだ。
僕は静かに学校生活という社会を過ごせていさえすればいいのだから。
足音は、単純に上履きやスリッパをすり減らしたくなかっただけだと思うが、
どこか心までもすり減らしたくなかったのかもしれない。
こんなことを思春期に考えている時点でついていない。これは自分で自分をそういう風に作ってしまったから、”不運”とは関係ないかもしれないが兎にも角にもついていない。
こんな考えで生活をしていればいよいよ疲れてくる。生きているというよりは自分という個人を、傍から見ている傍観者みたいな感じ。別に観測する意義もないから傍観者。
級友たちは年相応に学校生活を楽しんでいるように見える。
一方自分は見てるだけ、波風が立たない方に自分の立ち位置をその都度変える。
これって生きている意味はあるのかと思ってしまう。
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