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「痛っ」
少し離れた場所から先輩の声が聞こえた。何があったのか心配になり、慌てて先輩に近づくと、右の人差し指から赤い血が流れているのが見える。
「大丈夫ですか」
「大丈夫。ちょっと紙で切っちゃって」
先輩の周りに目をやると、床に文化祭の企画書が散らばっているのが見える。確認しようとして、切ったのだろうか。
いまだに赤い血をそのままにしている先輩の手を、傷口に触れないように優しく触れる。
俺の行動に驚いたのか、先輩は顔をこちらに向けた。
「大丈夫だよ」
「だめです。放っておいたら、細菌が入ります」
今度は先輩の手首を掴み、生徒会室の近くにある手洗い場所まで連れていく。
まずは、傷口を洗わないといけない。そう思ったからだ。
「洗ってください」
「……はい」
俺は思わず冷めた口調で言ってしまう。その俺の様子に、先輩はしぶしぶといった感じで傷口を洗い始める。
その間に、俺は生徒会室に戻り、鞄の中からあるものを取り出す。
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