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「早く来なよー!!」
いつの間にか波が当たる場所まで行っていた先輩は、なかなか来ない俺にそう叫んだ。
ローファーを脱いで、裸足になった先輩は子供みたいにはしゃいでいる。
「寒くないんですか」
俺もスニーカーを脱いで、裸足になり、先輩の元へ向かうと波が足に当たる。
波は思っていたよりずっと冷たくて、鳥肌が立つ。このままここにずっといると、風邪をひきそうだ。
先輩は俺よりもずっと足をつけているはずなのに、寒そうな素振りは見せない。
「寒いけど、これも青春って温度なんだよ」
「なんですか、それ」
先輩は、事あるごとに青春って言葉を口にする。それが何だか少しおかしくて、俺はその度に笑ってしまう。
「もう、笑わないでよ」
「すみませんって」
少しムスッとした顔をして、先輩は俺の肩を叩いてくる。
だけど、その叩いている力は強くなくて、全く痛みを感じない。
それも、またおかしくて笑いが止まらなくなる。
「……まぁ、君がそうやって笑顔でいてくれるならいいや」
今度は、満面の笑みに変わる先輩の秘密は一体何なのか。どうして自分を選ぶのか。
俺は、考えることをやめた。
こうやって、一緒にいてくれることが答えだ。
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