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人間は自分の欠点を正面から見つめることで大人になる。だから、自分のことを「大人」だと振る舞うのはまだまだ未熟であることの証拠だと、澪は考えていた。その点、ここで出会う男たちは、世間の荒波に揉まれ、酸いも甘いも経験しているからか、人生に対する謙虚さを兼ね備えていた。そんなところを澪は気に入っていた。 澪は、このラウンジに備え付けられている青汁も気に入っていた。最近の青汁は粉末を溶かしたものが多かったが、ここのラウンジの青汁は液体タイプのもので、新鮮だった。その分、青汁臭さがあったから、澪はいつも牛乳で割って飲んでいた。 いつもどおり一仕事終え、搭乗時刻になると、ラウンジを出た。澪が乗る沖縄行きの搭乗口の奥には、子供向けのアニメキャラクターのペイントが施された飛行機がとまっていた。子供達が、ポケモンの飛行機の前で記念撮影をしていた。これからバカンスに向かう人々の一群が搭乗口に吸い込まれているのが見えた。それまるで、スーツを着た人間は搭乗してはいけない、ここはあなたの様な人間が来るところではないよ、とでも訴えかけているようだった。 澪はいつも、プレミアムクラスの席を購入する。予約が取れれば通路側だ。窓側から見える景色は見慣れてしまった。通路側なら降りるときに早く降りられる。窓側は日差しが強い時の紫外線も気になったからだ。 隣には年老いた女性が座った。     
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