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「そうね。もちろん仕事で行くのよ。でも、もしかしたらこの飛行機を爆破するのと同じくらい酷い仕事かしらね。だって沢山の人達のクビを切りに行くのだもの」 老婦人は、それってどういうこと、といった表情で、澪を見つめていた。まるで、鏡の向こうの異世界に紛れ込んでしまった少女のような顔だった。 「私はね、経営コンサルタントなの。それも人事領域のね。来年の4月から雇用期間5年超となる有期雇用社員は、無期転換の権利が発生するのよ。政府としては無期化させることで安定的な雇用を実現しようとする狙いがあるんだけれども、企業としては、そんなに軽々しく無期化させることはできない。だって、無期化したら業績が悪化した時でも雇い続けなきゃならないでしょう。だから、法律が適用される4月までに今雇用しているベテランの有期雇用の社員をクビにして、新人に入れ替えようとしているの。私の役割はコンサルタントだからね、そういう風に経営指導しに行くってわけ」 老婦人は、納得がいかない、といった表情で首を傾げていた。     
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