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「プロの経営コンサルタントの方に、私のような門外漢が口を挟むことじゃないんだけれど、それって、誰が幸せになるっていうのかしら。だって、そうでしょう? 働く人たちにとっては、5年を超えたという理由だけで、一方的にクビを切られ、雇用する企業にとっては職務に習熟した社員たちを失う。国単位で見れば、結果として失業率が上がってしまう結果になるんじゃない。そんなの、誰の得にもならないわ」 「そうね。あなたの言う通りなの。誰の得にもならないわね。でもね、そういうことってよくあることなのよ。大きな組織なればなるほどね、特に国家規模の巨大な組織が絡んだ場合なんて、もう絶望的よ。ヒトラーやスターリンだって、最初は祖国を良くするために、政策を打ち立てていたんだもの。その結果、誰も幸せにならなかった。ユダヤ人や近隣諸国の人々だけでなく、自分たちでさえもね。人類って哀れな生き物だわ」 澪は表情を変えずに話続けた。ちょうど飛行機は、羽田空港の滑走路から飛び立ち、首都圏全体を見渡せる高度で、東京湾上空を旋回していたところだった。空は突き抜ける青をたたえ、太陽は東京の街全体を等しく照らし出していた。初めて飛行機に乗ったのだろうか、子供の歓声が後方のエコノミークラスの席から聞こえてきた。     
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