call

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プルルルル... 幾度かのコールの後に 「どうした?」 久しい声がする 「いや特に用はないんだけど 元気かなと思って」 「ふふっ元気だよ」 「良かった」 「珍しいね」 「どうしてるのかなーと思って 前に言ってたけど」 「うん」 「夜は眠れるようになったかい?」 「うん 前よりも眠れるようになったよ」 「そうか」 「体調も良くなったんだ」 「そっか、良かった そっちは暑くないかい?」 「大丈夫だよ」 「君とは寒い頃に会ったのが 最後のままだね」 「そうだね あれから会えてないものね」 「夏に帰って来るかなと思ってたんだけど」 「帰れなかったね」 「ねぇ今って外は見えるかい?」 「どうして?」 「今日の月は 落ちてきそうに大きくて綺麗なんだ」 「そうなの?」 「うん、君は夜空が好きだったろ? 物凄く綺麗だから見て欲しくて」 「見れるか解らないけど 見れそうなら見てみるね」 「そっちは、どうだい?」 「過ごしやすいよ」 「嫌な事や辛い事 痛い事はないかい?」 「うん、大丈夫だよ」 「そっか...本当に良かった」 「心配してたの?」 「してるよ、今も」 「心配しなくても良いのに」 「心配くらいはさせておくれよ」 「そこまで言うなら仕方ないなぁ」 「そっちは楽しいかい?」 「うん、会いたかった人に やっと会えたもん」 「物凄く会いたがってたものね」 「だから幸せだよ」 「そっか...そうか...幸せか...」 「うん」 「あぁ...じゃあ良かった... 本当に良かった...」 「そろそろ時間だから切らなきゃ」 「うん、長々と御免ね」 「良いよ」 「じゃあ...」 ”また夢でも良いから会いに来て” なんて ましてや逝ってしまった貴方に ”またね”なんて言える訳なくて 「じゃあね」 「うん、じゃあね」 ツーツーツーツー 無機質な機械音が 通話の終わりを告げる ねぇ 僕は いつ貴方に別れを告げられるんだろう
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