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デート中におけるスマートなお会計の方法だって?
十二月も二週目が終わろうとしている金曜の夜。四畳半の畳部屋はシングルベッドとその傍らに正方形の折り畳みテーブルを置いたらいっぱいになってしまう。
電気ストーブのスイッチを入れて十分も経てばたちまちぬくもってしまうちんまりした寮の自室。南はベッドのサイドフレームとテーブルの隙間にからだを滑り込ませるようにして座り、開いたノートパソコンの画面をしげしげと見つめていた。
龍:
『こんばんはキャット。
実は今日、これから三回目のデートっす♪
あのあとキャットがこっちの方がいいって言ってくれた写真送ったら「けっこう好きな感じなんだけど」って返ってきたんだよね(*^^)v で、実際会って一緒に飯食ったりカラオケ行ったりしたんだけど始終会話がはずむはずむ。年上なのにちょっとやんちゃな感じがめっちゃ俺好みだったわ。まず顔が好きだろ(重要)。プラス喋りが好き(決定打)』
ねー・・・
別にいちいち結果報告とか求めてないけど?
南は鼻でちいさくため息をつきながらマウスホイールを下へ下へくりくりし、つづくメール文を読む。
龍:
『今回またキャットの意見を聞きたいんだ。実は相手の方が年上だからって理由で前回二回とも、居酒屋の食事代とかカラオケ代とか他にも映画代とか全部むこうがもってくれちゃってさ。帰りのタクシー代までくれた。今日もそんな感じになるのかなって思うとさすがに気が引けるっていうか・・・。いいのかなって心配になるんだよね』
南はしらけた風に目を細め、クリックしない程度にボタン部分を爪先で打つ。コチコチコチ。
ふーん。相談というていの、ただの惚気かよ。
こんなん考える必要もない。デート代もタクシーも、「あなたを気にいってますよ」っていうわかりやすいアピールなわけでー。そいつにとってあんたは見栄をはりたい相手ってことなんでしょう。
しかも文面から察するにまだやってないみたいだし・・・。
でもどうだろう・・・? 見方によっては試されてるって可能性だって十分にある。
男なんて露骨だ。こいつを大切にしたいと思えば狼に紳士の仮面を被す。だけど何かの拍子に「その程度のやつ」と見下げれば、途端その程度にふさわしい扱いへシフトチェンジする。
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