羽と猫と弾丸のTriplehelix《終》

猫の手ほどき

こっちは本気だとしても向こうはまだ「新しいおもちゃ見っけた♪」くらいの感覚かもしれないし、浮かれるよりは慎重にいくのがいいかもね。

サイドフレームを背もたれに、後頭部を布団にあずけてからだを伸ばし、おなかの前で腕を組む。電気の紐がほんのわずかに揺れているのをじっと眺めながら考えを巡らせる。

ディナーでもランチでも、カラオケでも映画でも。関係を育もうとする二人の人間がいるかぎり避けては通れないお会計という問題。

絶対割り勘にしたいっていう人もいるだろうし、きゃー！おごってくれるなんて優しい！！・・・みたいにごっちゃん体質なちゃっかりした人もいる。

年下はおごられて当然、というスタンスも当然あるだろうし、食事のあとベッドで奉仕して感謝の気持ちを表現したいと思えない相手には、余計な借りを作らないように自分で払うという相手次第な人もいるかもしれないよね。

一分にも達しない短いやりとりの中、人間的にいろいろなことが露呈する、あまりに人間的なシーン。「お会計」というのはとてもめんどくさいものである。

よーし。南はおなかに力を入れてマットレスから頭を離す。
右手の人差し指をキーボードの「Ｊ」に、左の人差し指を「F」にスタンバイした。

新人研修の座学で使ったのを最後、ながらくベッドの下で埃にまみれていたノートパソコンは充電し電源ボタンを押したらちゃんと起動してくれた。
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