愛の告白 

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冷蔵庫を開け350ml缶を掴み、リビングには戻らず狭いキッチンの調理台を背にしてプルタブを引く。 トトトトトトトトトト・・・ 人ひとり分あけた傍らで、南の持つ包丁の刃が木製のまな板をたたいている。その小気味良い音が耳に心地良かった。慣れた手つきを横目にビールを煽っているとすぐに半分ほどになる。 真田の冬季休暇は長い。年内出勤した祝日分が後付けされ、一月の半ばまでつづく。 一応故郷はあるが、新しい年を迎える、という人間らしい概念を持たない父から帰って来いと言われたことはなかった。 喫煙の習慣はコンビニのごみ箱に捨てた。テレビは普段から見ない。家で一人やることといえば寝るか飲むかだ。 だらだら過ごしていたところに南がやって来た。三十日の夜、九時をまわった頃。今日は韮の飛び出したスーパーのビニール袋ではなく真新しい大きなクーラーボックスを抱えて。 「すごいでしょ」と誇らしげに蓋を開けると、しきつめた細かい氷に埋められた、あじ、めばる、かさご。あと・・・・いなだか? なかなかの大物もあった。 「これ、どうした?」と、驚きというよりいぶかしむ気持ちで問うと「んー・・・これー? えっとねえ・・・夕方海岸散歩してたら通りすがりの釣人に貰った」と、こっちを見ずに答えた南のからだは煙草の匂いを濃く纏っていた。 翔太がシャワーを浴び終える頃には、はちきれそうな腹をしていたいなだが南の手によって三枚におろされていた。 「ネギ♪ しょうが♪ 大葉♪ 白ごま♪ ゆずみそ♪」 アラから抜き取った中骨の多い部分をひとしきり包丁で打ち終えた南は楽し気に唱えながら順々、刻んだ薬味と調味料を併せていく。 翔太はその辺に転がっていた箸をとり、まな板からごそっとかすめとる。はじめて食べるいなだのなめろうは、居酒屋に行くと頼むあじのそれより臭みがなく、まろやかで上品な味がする。
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