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「お前、俺にくれたんだろ? なんで食べたらダメなんだ」 「間違えたの! ……その、わかるでしょ?」 上目遣いに同僚の片平 修を見た。 「だろうな。一週間前にお前は俺を振ったばかりだ」 そう。 この同僚の片平修に一週間前、突然告白された。 「入社した時から好きなんだ。付き合ってくれよ」 言い方は、いつもながらの横柄な感じだった。 考えてもなかったことでもあったから、ビックリ箱を開けたとき並みには驚いた。 横柄な告白をすぐに断る正当な理由が奈々にはあった。 「好きな人がいるから、ごめん」 きちんと理由を言って断ったばかりだ。 断っておいて一週間後、実は大好きだったと告白する女がいたらたまらない。 仮にいるとすれば、かなりのへそ曲がりだ。 それくらい少し考えれば、わかりそうなもんなのに片平は奈々からの有り得ない告白を受け、箱をぶん取り中身を開け、さっさとアップルパイを食べてしまったのだ。 ーーーこいつは、かなり根に持ってたのね! あっさり引き下がったくせして……実は私に振られた事を、恨んでたんだ! だから、私の魂込めたお手製アップルパイを食べちゃって! すっかり振られた仕返しのつもりなんだわ。
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